嗅覚行動と意識を司る神経回路メカニズムの解明を目指す。
吉原 良浩, Ph.D.
システム分子行動学研究チーム チームリーダー
yoshihiro.yoshihara [at] riken.jp
研究内容
嗅覚
嗅覚系は物体から発せされる匂い分子を受容し、その情報を鼻から脳へと伝え、匂いのイメージを脳内に創造する神経システムであり、食べ物の探索、危険の感知、繁殖のためのパートナーの認識など、生命活動に重要な役割を果たしています。また嗅覚系は「快・不快」あるいは「好き・嫌い」と表現される情動、さらには「記憶」と密接に関連した感覚システムでもあります。私たちは、神経行動学・遺伝学・発生工学・神経解剖学・神経活動イメージングなど多様な実験手法を駆使できるモデル脊椎動物としてのゼブラフィッシュの利点を最大限に活用し、匂い入力から行動出力へと至る嗅覚神経回路メカニズムの解明へ向けての統合的研究を行っています。
前障
意識はどのようにして生じるのか、この謎に対してDNA二重らせん構造の発見者であるフランシス・クリック博士は、彼の生涯最後の論文で「前障が意識の神経基盤である」という興味深い仮説を提唱しました。しかしながら前障は、哺乳類の大脳皮質深部にある薄いシート状の脳領域であり、古典的な解剖学・薬理学・生理学的手法では解析することが困難であったため、その機能はこれまで未解明でした。私たちは最新の神経回路遺伝学的手法を駆使することにより、前障が大脳皮質のニューロンを同期的かつ広汎に静止させることによって、脳の徐波活動を制御することを発見しました。現在、この知見を基にして、記憶の固定化・注意の割り当て・意識の生成など、高次脳機能における前障の役割の解明へ向けて研究を進めています。
研究主分野
総合生物
研究関連分野
生物学
キーワード
- 嗅覚
- 神経回路
- 行動
- 意識
- 前障
主要論文
- Narikiyo K., Mizuguchi R., Ajima A., Shiozaki M., Hamanaka H., Johansen J.P., Mori K., and Yoshihara Y.:
"The claustrum coordinates cortical slow-wave activity"
Nat. Neurosci., 23(6), 741-753 (2020).
10.1038/s41593-020-0625-7 - Koide T.,Yabuki Y.,and Yoshihara Y.:
"Terminal nerve GnRH3 neurons mediate slow avoidance of carbon dioxide in larval zebrafish"
Cell Reports, 22(5), 1115-1123 (2018).
10.1016/j.celrep.2018.01.019 - Wakisaka N., Miyasaka N., Koide T., Masuda M., Hiraki-Kajiyama T., and Yoshihara Y.:
"An adenosine receptor for olfaction in fish"
Curr. Biol., 27(10), 1437-1447 (2017).
10.1016/j.cub.2017.04.014 - Yabuki Y., Koide T., Miyasaka N., Wakisaka N., Masuda M., Ohkura M., Nakai J., Tsuge K., Tsuchiya S., Sugimoto Y., and Yoshihara Y.:
"Olfactory receptor for prostaglandin F2α mediates male fish courtship behavior"
Nat. Neurosci., 19(7), 897-904 (2016).
10.1038/nn.4314 - Miyasaka, N., Arganda-Carreras, I., Wakisaka, N., Masuda, M., Sümbül, U., Seung, H. S., Yoshihara, Y.:
"Olfactory projectome in the zebrafish forebrain revealed by genetic single-neuron labelling"
Nat. Commun., DOI: 10.1038/ncomms4639 (2014).
10.1038/ncomms4639 - Kaneko-Goto, T., Sato, Y., Katada, S., Kinameri, E., Yoshihara, S., Nishiyori, A., Kimura, M., Fujita, H., Touhara, K., Reed, R. R., Yoshihara, Y.:
"Goofy coordinates the acuity of olfactory signaling"
J. Neurosci., 33, 12987-12996 (2013).
0.1523/JNEUROSCI.4948-12.2013 - Mizuguchi, R., Naritsuka, H., Mori, K., Mao, C. A., Klein, W. H., Yoshihara, Y.:
"Tbr2 deficiency in mitral and tufted cells disrupt excitatory-inhibitory balance of neural circuitry in the mouse olfactory bulb"
J. Neurosci., 32, 8831-8844 (2012).
10.1523/JNEUROSCI.5746-11.2012 - Koide, T., Miyasaka, N., Morimoto, K., Asakawa, A., Urasaki, A., Kawakami, K., Yoshihara, Y.:
"Olfactory neural circuitry for attraction to amino acids revealed by transposon-mediated gene trap approach in zebrafish"
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 9884-9889 (2009).
10.1073/pnas.0900470106 - Miyasaka, N., Morimoto, K., Tsubokawa, T., Higashijima, S., Okamoto, H., Yoshihara, Y.:
"From the olfactory bulb to higher brain centers: genetic visualization of secondary olfactory pathways in zebrafish"
J. Neurosci., 29, 4756-4767 (2009).
10.1523/JNEUROSCI.0118-09.2009 - Kaneko-Goto, T., Yoshihara, S., Miyazaki, H., Yoshihara, Y.:
"BIG-2 mediates olfactory axon convergence to target glomeruli"
Neuron, 57, 834-846 (2008).
10.1016/j.neuron.2008.01.023
プレスリリース・メディア
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ゼブラフィッシュ脳遺伝子発現データベースの作製・公開
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魚の嗅覚警報物質を発見
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未踏の脳領域「前障」の機能を解明
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マウスは ラットの性シグナルを天敵情報として認識して 身をすくめる
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第0脳神経(終神経)の機能に新たな視点
-二酸化炭素からの忌避行動は終神経がつかさどる-
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15分で脳科学 「嗅覚の不思議 -匂いを感じる脳のしくみ」
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ATPのおいしそうな匂いに誘われて
-魚類・両生類に特異的な新しいアデノシン嗅覚受容体の発見-
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魚の求愛行動を促進するフェロモン受容体の発見
-プロスタグランジンF2αのセクシーな香り-
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嗅覚神経回路の精緻な配線図の解読に成功
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嗅覚神経回路の精緻な配線図の解読に成功
-発生工学と最先端の3次元画像処理技術による成果-
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匂いと行動。その間をつなぐ。
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おやっ、危険なにおい?
-嗅覚の鋭敏さを生み出す新規分子「グーフィー(Goofy)」を発見-
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セロトニンが睡眠・覚醒機能と24時間リズムを束ねる
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睡眠・覚醒機能と24時間リズムをセロトニンが束ねる
-睡眠・覚醒のサーカディアンリズム形成機構を神経活動レベルで解明-
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転写調節因子Tbr2が匂い情報の興奮
-抑制バランスを調節-Tbr2遺伝子欠損マウスは匂い刺激に対して過敏に反応-
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味を受容する細胞が生まれる仕組みを解き明かす
-甘・旨・苦味を感知できないマウスの作出から(東京大学プレスリリース)
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おいしそうなにおいを伝える嗅覚神経回路を同定
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美味しそうな匂いを伝える嗅覚神経回路を同定
-ゼブラフィッシュはアミノ酸がお好き!?-
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左右非対称な神経回路の存在を嗅覚系で発見-匂いの好き・嫌いなど嗅覚と感情とのつながりを探る新たな手がかりに-
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脳の「匂い地図」を形成する分子メカニズムの解明へ前進- 嗅覚神経回路形成に欠かせないビッグなガイド分子「BIG-2」を発見 -
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嗅覚神経細胞の鼻への配置と脳への神経接続に必須な遺伝子を同定
- 神経回路形成の2つの重要なステップに同じ遺伝子が関与 -
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やわらかな脳を保つために必要なタンパク質「テレンセファリン」
- 神経シナプス結合の柔軟性を調節する分子メカニズムを解明 -
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鼻から脳へ神経を導く遺伝子を同定
- 神経回路形成の道案内は最初が肝心!! -
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嗅覚神経回路形成の分子メカニズムの一端を解明- Arx遺伝子がにおいの神経回路形成を司ることを発見 -
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神経回路を可視化する
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選択的神経回路可視化技術の開発
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神経回路の選択的可視化に成功
-脳の構造・機能の解明に新しい道を開く―
メンバーリスト
主宰者
- 吉原 良浩
- チームリーダー
メンバー
- 日野 喬央
- 特別研究員
- TEE Ling Fei
- 特別研究員
- SAKIZLI Ugurcan
- 特別研究員
- 高岡 美渚季
- 大学院生リサーチ・アソシエイト
- 新井 亜紀
- テクニカルスタッフⅠ
- 卜部 美帆
- テクニカルスタッフⅠ
- 景山 慧美
- テクニカルスタッフⅠ
- 木村 直生
- 理研スチューデント・リサーチャーM