感覚情報に基づいて行動する際、脳内でどのような計算がどのようなメカニズムで行われているかを、回路レベルで理解したい。
風間 北斗, Ph.D.
知覚神経回路機構研究チーム チームリーダー
hokto.kazama [at] riken.jp
研究内容
我々は、絶えず外界から獲得する感覚情報に基づいて思考し、判断を下し、行動します。例えば、好物の匂いを感じれば歩みを進め、懐かしい匂いに遭遇すれば暫し過去を回想し、腐敗物の匂いを感じれば回避します。しかしながら、知覚を生み出す神経のメカニズムはまだ良く分かっていません。当研究チームは、感覚器官から得られた情報がどのように処理されることによって知覚が形成され、それが経験や環境によってどのように変化するのかを理解することを目指します。
この目標を達成するために、様々な利点を備えたショウジョウバエをモデル動物として用います。脳を構成する神経細胞の数が少ないので、多くの細胞を同定し、調べることができます。電気生理やイメージングの手法を用いて、生きた個体内において、感覚刺激に対する神経細胞の応答を記録できます。遺伝学を用いて、細胞を標識するだけでなく、その活動を変化させられます。一方では、感覚入力を精確に制御できる仮想空間において動物の行動を追跡する技術を用いて、間接的に動物の知覚を読み取れます。これらのデータを組み合わせて神経活動と行動の関係性を表す数理モデルを構築し、脳が行う情報処理を明らかにします。更に、知覚を支える神経メカニズムを、細胞、シナプス、回路レベルで理解することを目指します。
研究主分野
複合領域
研究関連分野
総合生物
キーワード
- 感覚情報処理
- デコーディング
- 神経回路
- 感覚運動変換
主要論文
- Kato, A., Ohta, K., Okanoya, K., Kazama, H.:
"Dopaminergic neurons dynamically update sensory values during olfactory maneuver."
Cell Reports. 42, 113122 (2023). - Endo, K. and Kazama, H.:
"Central organization of a high-dimensional odor space."
Current Opinion in Neurobiology. 73:10252 (2022). - Endo, K., Tsuchimoto, Y., Kazama, H.:
"Synthesis of conserved odor object representations in a random, divergent-convergent network."
Neuron. 108, 367-381 (2020).
10.1016/j.neuron.2020.07.029 - Shiozaki, H.M., Ohta, K., Kazama, H.:
"A multi-regional network encoding heading and steering maneuvers in Drosophila."
Neuron. 106, 126-141 (2020).
10.1016/j.neuron.2020.01.009 - Mercier, D., Tsuchimoto, Y., Ohta, K., Kazama, H.:
"Olfactory landmark-based communication in interacting Drosophila."
Current Biology. 28, 2624-2631 (2018).
10.1016/j.cub.2018.06.005 - Takagi, S., Cocanougher, B.T., Niki, S., Miyamoto D., Kohsaka, H., Kazama, H., Fetter, R.D., Truman, J.W., Zlatic, M., Cardona, A., Nose, A.:
"Divergent connectivity of homologous command-like neurons mediates segment-specific touch responses in Drosophila."
Neuron. 96, 1373-1387 (2017).
10.1016/j.neuron.2017.10.030 - Shiozaki, H.M. and Kazama, H.:
"Parallel encoding of recent visual experience and self-motion during navigation in Drosophila."
Nature Neuroscience. 20, 1395-1403 (2017).
10.1038/nn.4628 - Inada, K., Tsuchimoto, Y., Kazama, H.:
"Origins of cell-type-specific olfactory processing in the Drosophila mushroom body circuit."
Neuron. 95, 357-367 (2017).
10.1016/j.neuron.2017.06.039 - Badel, L., Ohta, K., Tsuchimoto, Y., Kazama, H.:
"Decoding of context-dependent olfactory behavior in Drosophila."
Neuron. 91, 155-167 (2016).
10.1016/j.neuron.2016.05.022 - Kazama H.:
"Systems neuroscience in Drosophila: conceptual and technical advantages."
Neuroscience. 296, 3-14 (2015).
10.1016/j.neuroscience.2014.06.035
プレスリリース・メディア
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蚊の観察に特化した仮想空間を理研とともに構築
シリコーンオイルが脚についた際のニオイを覚えて回避行動を取るなど明らかに
(花王プレスリリース)
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ドーパミン細胞が匂いの価値を表現し更新する機構を解明
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匂いオブジェクトの脳内表現を生成する情報処理の解明
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方向感覚に関わる神経回路のダイナミクス
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昆虫の外骨格にナノサイズの穴が開く仕組み
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動物間コミュニケーションの新戦略を発見
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記憶と運動の情報を区別して伝える神経回路を発見
-バーチャルリアリティ空間を飛行するハエの脳信号を解読-
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匂いの素早い検出と濃度の弁別に優れた細胞タイプを発見
-細胞タイプ特異的な機能を生み出す神経回路メカニズムを解明-
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匂いに対する神経活動と行動を数理モデルでつなぐ
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脳科学出張講座 「匂いを感じる脳を解く」
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匂いの好き嫌いを決める脳内メカニズムを解明
-ハエの神経活動から匂い嗜好を解読する数理モデルを作成-
メンバーリスト
主宰者
- 風間 北斗
- チームリーダー
メンバー
- 髙木 佳子
- 研究員
- 遠藤 啓太
- 研究員
- MERCIER Damien
- 研究員
- WEI Hongping
- 基礎科学特別研究員
- 太田 和美
- テクニカルスタッフⅠ
- 加藤 郁佳
- 大学院生リサーチ・アソシエイト