ミステリアスな脳を深く知りたい - Wlaa Assi
2020年8月4日
Wlaa Assi
東京大学大学院 新領域創成科学研究科
博士課程
我々の脳はミステリー! 脳の謎を解明したいと私は好奇心でいっぱいになります。脳は人間の身体の中で一番複雑な臓器です。知性と記憶を司り、感覚を解釈し、行動を制御しているのです。
私は2017年に来日し、東京大学大学院新領域創成科学研究科の博士課程に在籍しながら理研CBSにて研究プロジェクトを進めています。脳科学塾のポスターをCBSで偶然目にし、嬉しくてたまらなかったことを今でも覚えています。すぐに応募に必要な書類を準備しました。担当者から参加可能と連絡が届いたときはとても興奮しました。
私の博士課程の研究分野はウイルス学です。脳科学とは直結してないようにも見えますが、ウイルス感染から引き起こされる神経学的、精神医学的機能障害を理解するためには、この2つをリンクさせることは重要です。脳におけるウイルス感染は、一時的または恒久的な神経学的、精神医学的機能障害を引き起こす可能性があるからです。
脳科学塾は9月から翌年7月の約10カ月の間に週1回行われる講義をはじめ、ワークショップなど脳神経科学分野に関する包括的なプログラムです。細胞の構造と機能、計算論的手法、テクノロジー、学習と記憶、情動と社会的行動、疾患などがテーマとなる講義を楽しむことができました。また、講師であるチームリーダーたちと話す機会もあり、脳科学に関する理論的な知識を得ただけでなく、批判的思考力や科学的なコミュニケーション力、プレゼンテーションスキルを向上させることもできました。また、さまざまな国からそれぞれのバックグラウンドを持つ学生たちとも出会え、このプログラムの特徴である国際性を大いに享受できました。
脳について学びたい意欲のある学生にとって、脳科学塾は間違いなく素晴らしい機会になるでしょう。先輩研究者やチームリーダーたちと関わることのできるこのプログラムを東京大学院生の皆さんに強くお勧めします。脳神経科学に興味があり、この分野で貢献したいと考える学生にとってはその道が開けることでしょう。また、他分野の学生にとっても統計学やPython入門、ジャーナルプレゼンテーションなどの学術的・科学的テーマも網羅しているため興味深いプログラムだと思います。
「知れば知るほど、自分が知らないということを知る」というアリストテレスの格言があります。まさにこの言葉は脳科学に当てはまります。私はこのプログラムを通して、いまだに小さな虫の脳でさえ完全に理解できていない脳がいかに素晴らしく洗練されているかを実感することができました。この10年で科学者たちは脳についてより多くのことを理解しましたが、まだ包括的な理解には至っていません。このミステリアスな脳という臓器についての知識を深めるためには、異なる分野の科学者による学際的なコラボレーションが不可欠なのです。